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2017年12月19日 - 書評のコーナー ~その43~

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マンガ大賞受賞ということで、読んでみました。「小説家になる方法」というサブタイトルが付いていたので、期待して読んでみたのですが、学園ラブコメの範疇でした。

響という名の女子高生が主人公で、高校の文芸部が主な舞台。初めて書いた小説が出版社の新人賞を受賞。天才女子高生と持て囃される一方、当の本人は酷い社会生活不適応者で読んでいるこちらがハラハラします。キャラで言えば、芥川賞受賞の「コンビニ人間」の主人公を徹底的に凶悪にした感じです。絡んできた不良の指を躊躇いもなく折ったり、校舎の屋上から不意に落ちてみたり。さらには新人賞受賞のパーティー会場でパイプ椅子を振り回して暴れてみたり。凡そ直情型で後先顧みない、普通ならば変人扱いなのですが、このキャラの女子高生を軸に話が展開してゆくのです。いっぽう、響の小説を読み、今後小説で食ってゆく事を諦めてゆくベテラン作家さんも登場するのですが、意外とこれらベテラン作家さんのほうが面白かったり色々考えさせられたりします。

ただ、既に6巻まで刊行されているのですが、一向に小説家になる方法は書かれる気配はありません。

凄い小説を書いた女子高生という設定なのですが、残念ながらその書かれた小説は一行たりとも出てきません。色々な賞を取ったり、同業者からの賛辞によって、凄い小説であろうことは解るのですが、何分にも小説の現物が一行も出てきていないのでどのように凄い小説なのかは伝わってきません。グルメ漫画と違い、絵で表現できないので隔靴掻痒感は否めません。

芥川賞と直木賞の最終選考が、同じ料亭の1階と2階で行われるだの、発表は帝国ホテルで行われるだのの蘊蓄は披露してしまったので、今後の展開とネタ探しに苦労しそうです。いつまでも、この破天荒キャラ(破天荒;人のなしえなかった偉業を達成すること。滅茶滅茶な人という意味ではないのです、念のため。)に頼っての物語では飽きられてくるでしょう。レアな題材を扱っているだけに頑張ってほしいです。ひとまず今後に期待です。