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2018年11月20日 - 書評のコーナー ~その51~

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感染領域

2018年このミステリーがすごい大賞受賞作です。最近のこの賞の受賞作の傾向としては、緻密なプロットや主人公のキャラなどよりも、多少ぶっ飛んだ設定に対しての正確な状況描写やリアリティーが求められているのかなと思われます。そのためか、医療物やサイエンス物が多く受賞している印象があります。

本作は明らかにサイエンスミステリー仕立てです。ざっくりいうと、巨悪(外国企業)が企てた野菜を巡るトラップに対して冴えない研究者が立ち向かうという王道と云えば王道のストーリーです。迷うところや勝てるのだろうかと心配することなく、なんか絶対勝って終わるだろうなという安心感があります。九州でトマトが枯れてしまう病気が発生します。非常に畑を焼いてしまえと指示する官僚と渋る農家。鳥インフルエンザからヒントを得たのかなという展開から始まります。解決に駆り出されるのが、上司から有無を言わさず指令を受けた、うだつの上がらない野菜の研究者。相方は、農水省のトップエリート。しかし冴えない研究者はとんでもない人脈を持っていて、天才バイオハッカー(こんなのが存在するのかは別として)に分析を依頼します。どこからどう見てもウイルス感染なのでウイルスの分析になります。機械と人手があれば最近では大体の遺伝子検索も住んでしまう時代なのですが、当然ながらサクサク話が解決すると抑揚がないので小説としては成立せず、物語の主人公にはピンチが必要になります。天才バイオハッカーが原因を突き止めるものの、もう少しというところで解決しきれません。DNAの電気泳動やら、DNAライブラリからの遺伝子クローニングなんて、ああ昔大学院生のころやってたなあという話がてんこ盛りです。最終的には機械が足らないという科学実験ではごくごく当たり前の話で行き詰まるわけですが、割と無理筋のどんでん返しで話は解決します。後半は、分子生物学の知識が少しあって実験もしていた人の方が楽しく読めます。ミステリーなので人が殺されていますが、別にこの件は解決してもしなくてもあまり話の展開には関係ありません。外国企業が仕掛けた農業で日本を征服しようという企みが基本のテーマなのですが、よくよく考えるとf1種子を導入している時点で現実ではすでに日本は米国の農業メジャーに支配されているわけです。気になる人は、f1種子で検索すると色々出てきます。

科学嫌いな人は、最後まで読み通すのに根気がいりそうな一冊です。万人向けではありません。