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2022年7月22日 - 書評のコーナー ~その79~

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ブルーピリオド

 

ピカソの作品に「青の時代」という作品群があるのはご存じですか。「青の時代」英語に直すと「ブルーピリオド」 そう、絵画を題材にしたコミックです。

なにをさせても小器用にこなす優等生の不良少年の矢口八虎、青年漫画によくある設定の主人公の高校2年生から物語は始まります。高校生なのに渋谷のスポーツバーでタバコを吸いながら酒を飲み、徹夜明けで朝の渋谷を迎えます。その渋谷の朝の青さが目に残っていたのか、美術の授業で拙いながらも青い渋谷の朝を書き、それを褒められたことによって美術の楽しさに目覚めます。この辺りはどうにも牽強付会ですが、とにかく矢口が美術に目覚めて美術部に入部、その後なんと美大を目指すことになります。ものすごく強引な設定ですが、ここは流しましょう。

そして矢口が目指すのは国立で唯一の美大、東京藝術大学です。でも何を勉強したらよいのか判らないので、矢口は東京藝大を目指して美術の予備校に通います。本作のほとんどの場面は予備校絡みです。東京藝大受験は東大に入るより難しいとよく言われますが、その理由がコミックを読み進めるにつれ解ってきます。単純な倍率だけではなくどんな試験が出されるか運の要素も大きいようです。

藝大を受験する人は変わった人が多いようですが、予備校の同級生たちもキャラが立っています。5巻6巻の藝大受験直前の2冊は矢口の心の機微が上手に書かれておりましてこちらも一気に読み進めてしまいます。散漫になりがちな受験生たちの群像劇を上手にまとめているのが予備校の大場先生。最初は端役かと思っていましたが、この人抜きでは話が進まないようになっております。作者も東京藝大出身ですので作者が受験生に言いたいことを代弁させているのでしょう。

蘊蓄多めの青春漫画。珍しいジャンルの一品です。