恋文の技術(新版)
恋文が上手くなるかどうかは別として、一風変わった文体で書かれた小説です。書簡体というのですが、手紙のやり取りで話を進めるという物語の展開に多少時間がかかる難しい文体です。夏目漱石や太宰治等の作品にはあるのですが現代の作家さんの作品ではあまりお目にかかりません。
元々は、平成22年に刊行された小説ですが、文庫化を機にかなり加筆訂正されているとのことです。
内容的には、京都大学から能登の実験場に一時配属された学生が、寂しさを紛らわせるためになのか、友人知人に手紙を書きまくる話なのです。そして、その学生を書いているのは、ヘタレな大学生を書かせたら右に出る者はいない森見登美彦です。主人公はヘタレ度多め変態度やや多めの悶々とした大学院生の守田一郎。友人への手紙は強気な書きっぷりで、でも懸想する女性へは非常に回りくどい書きっぷりという、話の展開を楽しむというよりは、物事の進まない苛々っぷりを愉しむという読み方になります。
最初の方は楽しく読めるのですが、スピード感の一切ない小説なので、長くても2-3日で読破しないと飽きて途中で放り出してしまいます。
読破して恋文が上手になったのかどうかはわかりませんが、変わった文体ですので一度読んでみてはいかがでしょうか。