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2015年7月25日 - 書評のコーナー ~その24~

旬の作品なので早速読んでみました。とは言え、店頭での書籍は売り切れであったため、電子書籍(e-book)を使用しての読書です。紙媒体では148ページなのですが、スマホで読むと411ページ。画面が小さいので、1ページあたりの文字も少なく、ページを捲るのが忙しかったです。かと言って、文字を小さくすると今度は老眼で読めないし。

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さて、内容ですが。売れない芸人徳永が主人公。熱海の花火大会の余興で来ていた、やはり売れていない先輩芸人の神谷を師匠と崇めるところから話は始まります。

そして、その徳永と神谷との、理解に苦しむ会話を中心に物語は進んでゆきます。大体にして、神谷のコンビ名が「あほんだら」であることから判るように、基本的に大阪弁で展開されます。「せやねや」などのベタベタな口語体がベースとなり、そして兎に角その会話が難解。よく言えばシュールと云うのでしょうか。関西弁のnative speakerでなければ、その難易度はMaxでしょう。

更には、二人の会話の殆どは、果てしなくどうでもいい話ばかり。時々、まじめな芸人論や漫才論も出てきますが、基本的には与太話の連続です。それでも読み進められるのは、文章が矢張りうまいからなのか、独特の文体に惹かれているからなのか、芥川賞という冠に読まされているのか。特に盛り上がる場面もないわけではないのですが、彼ら二人の心情の描写を楽しむというところは、純文学的と言えば純文学的であります。

さすが芥川賞と思って読み進めていたのですが、後半1/4はやや強引な展開になっているのが残念でした。しかしこのストーリーで落ちをつけるのならばこれしかなかったのかなとも妙に納得。大体が純文学作品には落ちがない物も普通にあるのですが、作者的には落ちがないとおさまりが悪かったのでしょう。

それでも前半1/3は試験問題にするには適切な文章だと思いました。そのうち教科書に載るんじゃあないでしょうか。読み返すことは無いと思いますので、少し安めの設定になっている電子書籍あるいは文庫本になったら、buyです。