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2016年7月17日 - 書評のコーナー ~その32~

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2015年の「このミステリーがすごい」大賞作品です。「このミス~」は「チームバチスタの栄光」の海堂尊氏を輩出した割と期待の持てる賞です。

となると、書評のコーナーとしては取りあえず読んでおかなければいけないでしょう。しかも今回は、「美術ミステリー」と煽られているではありませんか。美術蘊蓄は大好物なので、期待は募ります。

内容は、現代アート作家とその作品を扱うギャラリーを中心にそのアトリエでの制作風景やら、美術館のパーティーでの一コマ、更に香港でのオークションありで美術業界を舞台に話が転がって行きます。

美術ミステリーという触れ込みでしたので、絵に隠された秘密を暴きながらの謎解きかと思っていましたが、美術業界を舞台にしたサスペンス形式でありました。ミステリー仕立てにするには登場人物が少し物足りなく、謎解きの場面も少し強引で、犯人本人との対話の中で秘密の開陳を行うという難しい展開を取っております。名探偵コナン的です。余程キャラが立っていないと座が白けてしまいます。余計なお世話かもしれませんが、助手役と二人で少しずつ話を紐解いてゆく形式がリズムよく読めたかもしれません。

それでも業界物であるので細かいトリビアが混じっていて、本としては楽しく読めました。殊にオークションのために香港についたあたりからの描写は秀逸でした。ここだけ別の人が書いたのかなと思うくらい生き生きした描写でありました。話はいきなり脱線しますが、緊張感漲り躍動感溢れる描写で一番記憶に残っているのが、冲方丁の「マルドウックスクランブル」のカジノの部分です。寝食を忘れるほどグイグイ読ませるという点では今のところ一番です。

さて、閑話休題。漫画と小説というメディアは違いますが、美術品に秘められた謎と歴史をモチーフにしたものといえば、漫画の「ゼロ」「ギャラリーフェイク」が挙げられます。小説界において、美術品に秘められた謎と薀蓄を題材にすると原田マハと同じジャンルになるので意図的に避けたのでしょうか。個人的にはそちらのジャンルのほうが好みなのですが。

次回作をどの切り口で作るかは担当編集の腕次第でありますが、今回と同じスタイルでの展開では少し物足りない感ありありです。美大出身ならではの知識の披露あるいは香港舞台でのストーリーにするか。意表をついて、主人公が新たにギャラリーを立ち上げるか転職するかして、ギャラリー視点からの業界もののライトノベルとして、「私の周りでは何故か事件が起きるのよ」といいながら主人公が巻き込まれてゆくパターンのシリーズもので続編とするか。

著者の経歴を加味して、次作のコンセプト次第では大化けする可能性ありと評します。