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2016年11月12日 - 書評のコーナー ~その35~

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曹洞宗の僧侶が講師で、禅を齧り始めたばかりの詩人が生徒役。対話形式で、難しい禅用語はなるべく使わず禅の世界を解く。といえば聞こえは良いのですが、講師役の僧侶は、東京大学大学院に在籍中に30歳を目前にして禅に目覚め、美方郡の安泰寺という禅寺で修行と得度。しかもその禅寺はかなり変わっていて、電気ガス等々のインフラ以外のコメや野菜は基本的に自給自足。そこで5年修行したのちに渡米。アメリカ東海岸のマサチューセッツ州にある座禅堂で18年にわたって外人相手に禅を教えて、そして今は米国と日本を行ったり来たりというかなり変わった僧侶。そして生徒役の詩人もかなり癖が強いです。だいたい、職業が詩人という時点で既に胡散臭いのですが、日本からはじき出されたのか20年くらい前から米国在住。そして禅に目覚めて禅籍の翻訳も始めたという変わり種。

そんな悪口はさておいて、書評です。最初三分の一は割と良いことを書いております。ブッダ(仏陀)とシッダールタの違いから始めてくれます。シッダールタはお釈迦様の名前であって、そしてブッダとは「目覚めた人」という意味であり、人名ではなく人間のクオリティーを示す言葉であると説明してくれています。そして禅の成り立ちから分派の派生、禅宗とはというところを噛み砕いて解説してくれています。基本的に禅宗には苦行はないとか、坐禅と瞑想の違いとか。確かに、手塚治の漫画「ブッダ」を読んでいても、シッダールタは苦行に見切りをつけて苦行林を去ってゆきます。この本の前半を読んだ後に「ブッダ」を読み返すと理解度が深まります。

しかし本書中盤の坐禅の坐法のあたりから話が徐々に怪しくなってきます。普段、外人相手に坐禅を教えているからなのか、どうしてもエネルギーがどうとかスピリチュアルがどうとかという話になってきて、坐禅の説明の途中にバランスボールが出てきたりして。まあ、坐禅を実際に始めてみて上手く坐れない人には読む価値ありなのかもしれませんが、私は坐ったことがないのでよく解りませんでした。

最後のほうは、米国の禅事情についてのお話です。禅とZENについての解説です。漢字が解らないので当たり前の話なのですが、外人は全く意味を解さずに読経していると。そこで、お経の英語バージョンを作成して教えているとのこと。この辺りは流石に東京大学大学院です。最近、雑誌を見ていてもインテリ僧侶による人生相談のコーナーが増えてきたなと思っていましたが、米国でもZENを始めるのはインテリが多いそうです。色々悩むところが多いのでしょうか。

実際に禅を始めて、上手く坐れなくて悩んでいる人には非常に良い本だと思います。しかしながら、正法眼蔵や禅の公案とかを求めて読むとがっかりです。読み手を選びます。