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2019年9月20日 - 書評のコーナー ~その59~

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神様のカルテ、続編です。最早、信州の山並みの描写や松本市内の描写は堂にはいったものです。地の文は、すっかり自分の世界観を構築しての、一人称での語りなので、読者はスッと感情移入できます。見事なものです。

今回の栗原一止は、市中病院の本庄病院から信濃大学の大学院生になっていました。9年目で大学院は少し遅いような気がしますが、そこは人それぞれなので気にしないことにしました。

今までは、市中病院の医療という仕事の過酷さや人間関係に関しての話が多かったのですが、今回の舞台は大学病院。仕事が過酷なのは当たり前。それに加えて、大学病院あるあるの話が盛りだくさんででした。教授を頂点とした厳然たるヒエラルヒー、その中で大学院生は底辺に位置します。しかし仕事内容は最前線の矢面に立たされます。あるあるです。授業料を払っている学生さんなのに給与もなしで医療の最前線に配置されるのです。おかしいと思うでしょうが、これが現実です。

市中病院では、一人の患者に対して主治医は一人ですが、大学病院ではその組織の特異性や疾患の特異性から複数主治医性を取っております。「患者の数よりも医師の数が多い」が作中で何度も出てきますが、本当にそうなのです。しかし、常に医師不足で現場が疲弊していることも事実です。このあたりは、本書を読んでいただければ何となく得心です。例によって、一人一人のキャラが立っております。熱血漢あり、冷血漢あり、ツンデレの女医さんまで用意してあります。これでは中身がわからないという方、まあ読んでみてくださいな。

全国の大学病院勤務の皆さん、大学院生の皆さん、医学生の皆さん、悪者にされた大学看護部の皆さんも楽しく読める良い仕上がりになっております。

文体が決まっているって良いですね。安心して読めます。