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2017年4月20日 - 書評のコーナー ~その38~

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先日酷評した「ひとでなし;金剛界」の続編でも出ていないか検索したところ、この本が見つかりました。「ひとでなし」がいまいちだったので、新シリーズ刊行かと思っておりましたが、何と2014年の作品。自称京極フリークの私が恥ずかしながら見逃しておりました。

本の構成的には、いつもの長編ではありません。短編集です。短編と云ってもそこそこのボリュームです。主人公は、とある古本屋の主人。というと京極堂シリーズの不機嫌な顔を頭に浮かべてしまいますが、こちらの主人は至って穏やか。元僧侶の古書肆です。舞台は京極堂シリーズよりも1世代昔の明治中期頃。話を進めてゆくのが、元士族の冴えない若旦那。京極堂シリーズでいうところの関口巽役です。この人がうだうだ悩みながら古本屋の「弔堂(とむらいどう)」に足を運ぶのですが、うまい具合に政財界の大物や文豪と古本屋で居合わせるのです。まあ、本を立ち読みして惣菜買って家路につくだけでは小説にならないので当たり前なのですが。そして、古本屋で古書肆が何をするかと云うと、古本屋なので当然本を売りつけるわけです。ただ、単に本を売るだけではなく、充分に事情を聴いたうえでその人に必要とされる本を見つけて売るという変わったスタイル。医者が薬出すような感じです。お客さんの懊悩を解きほぐし、解決策となる古本を提示して最後にお客さんの正体を読者に向けて明かすといった具合です。

登場人物は至って少ないです。基本的に、若旦那と古書肆そしてその使用人の3人とお客さんで話は進みます。短編なので、特に伏線がある訳でもなく、どんでん返しがある訳でもなく、厭な客に対しての理屈による脳への物理的攻撃もしません。キャラの発生する毒が少ないようにも思われますが、さらりと読めて、最後にお客が若かりし日の文豪であったなどという落ちがついていたりして、気軽に読めます。

平日の晩、テレビ詰まらんなあと思っている時。1時間程度で寝入るまでに1編読むには最適です。